ヘルス・ランニングデザイン・ラボは、多様な学術的側面の融合領域として、健康とランニングを健康、高齢者、教育、街づくり、SDGsの観点から研究しています。

ヘルス・ランニングデザイン・ラボとは

ヘルス・ランニングデザイン・ラボは、慶應義塾大学SFC研究所内に設けられた同じ研究テーマを持つ研究者により、横断的・融合的に構成された組織であり、先端的研究ミッションを持つ研究グループです。

本ラボでは、⼤学スポーツの中での⻑距離⾛や駅伝のあり⽅、社会的意義から、強化策や強化⽅法、練習法に至るまで、ICTの利活⽤、医学や⽣理学を含む多様な学術的側面の融合領域としてのランニングと健康について研究します。また、健康とランニングを健康、高齢者、教育、街づくり、SDGsの観点からも研究しています。この健康、スポーツ、ランニング、そしてサステナビリティをキーワードとした研究・教育活動の成果として、箱根駅伝本戦出場があると位置づけています。

なお、本ラボの研究については、2017年に100周年を迎えた體育會競走部の慶應箱根駅伝プロジェクトと連携して実施することにより、実践的に研究をすすめるものとします。



沿革
2016年12月 ランニングデザイン・ラボ開設
2017年3月 體育會競走部の慶應箱根駅伝プロジェクトと連携、本格始動 [プレスリリース]
2018年1月 第94回箱根駅伝8区 関東学生連合に競走部選手が選抜選手として出場
2018年春学期 株式会社日立製作所寄附講座「ランニングデザイン」開設
2019年秋学期 日清食品ホールディングス株式会社寄附講座「ランニングデザイン」開設
2020年11月 ラボ名称をランニングデザイン・ラボからヘルス・ランニングデザイン・ラボに変更
2021年1月 第97回箱根駅伝5区 関東学生連合に競走部選手が選抜選手として出場
2021年6月 21年ぶりに第53回全日本大学駅伝関東選考会に競走部長距離ブロックが出場
2022年1月 第98回箱根駅伝7区 関東学生連合に競走部選手が選抜選手として出場

参考
ランニングデザイン・ラボのPITCH(登壇者:保科光作「慶應箱根へ ~ ランニング研究の先に」)の様子、Open Research Forum(ORF)、2019年11月23日 (土・祝) 15:30 - 15:45、東京ミッドタウン・イーストB1F ホール

研究内容

1. 研究目的

大学駅伝に関する研究はこれまでコンディショニングなどの事例研究をはじめとして、トレーニング、運動生理学の視点から多くなされてきています。様々な先行研究によると、大学駅伝にむけてのスケジューリング、トレーニングには各校差がなく、どの大学も似ているということが言えます。 駅伝はチームスポーツであり、「駅伝で勝つためには、個人の能力も重要であるがそれ以上にチームワークが必要である」と報告されていますが、大学駅伝の先行研究では選手個人に焦点を当てたものがほとんどでチームに焦点を当てた研究は見当たりません。 一方で「チームスポーツにおけるチームの強さを評価するためには、個々のメンバーの技術力とチームワークとの両方を評価することが不可欠である」と指摘されています。チームの強さの要因を知るためには、選手個人の能力を問題とするだけではなく、チームワークすなわち、集団機能について研究することも必要です。

集団機能は、行動(集団機能)が部活内で適切に働くことが、目標達成や活動の維持、発展に必要であると指摘されています。チーム内での個人の行動やその変化がチーム全体にどのような影響を与えるのか、またそのプロセスを理解することが、効果的なコーチングに必要なことであるといえます。 コーチングプロセスの現実を「泥沼的(the ‘muddiness’ of the realities of the coaching process)」と表現されるように、コーチングを行う際、様々な要素が相互に作用しあい複雑な影響をコーチングに与えているといえます。 しかしそのような現実の中、コーチが「構造化された即興(structured improvisation)」を行っていることも事実です。さらに「一貫して専門的知識,個人間の知識,個人内の知識を駆使し、あるコーチングコンテキストにおいて知識を使いこなすことによって、アスリートの4Csをあげていく。それが効果的なコーチングである」と述べられているように、 コーチングを行う際、二度と同じ現象が起こらない中で、そこで何が起きているのか過去から学び、経験を整理しながらより良い即興で効果的にコーチングできるように構造化していくために、ひとつひとつの現象を理解することが重要であるといえます。

しかし、これまで大学駅伝出場チームが一年間歩んできたプロセスを対象に行った研究は行われていません。大学駅伝においても、1人1人がどうであったか以外に、レギュラー選手、さらにはそれを支えたメンバーを含めて何がそこに起こったかというプロセスを包括的に理解することは、効果的なコーチングを行うための学びとなり得ます。 そこで、大学駅伝においてチームビルディングをするにあたって、チームのプロセスを理解し研究をすることは効果的なコーチングを行うにあたっても重要なことと言えます。

こうした実践的研究はもちろんのこと、近年過熱する駅伝ブームや、これとマラソン競技との関係、そして大学スポーツとしての長距離走や駅伝競技のあり方を含め、ランニングのデザインを全般的に検討する中で、健康とランニングが健康、高齢者、教育、街づくり、SDGsに及ぼす影響について研究することを目的とします。

2. 研究領域

ヘルス・ランニングデザイン・ラボでは、「ヘルスデザイン」「SDGs」「ランニングアナリシス」の3つを研究領域として研究活動を進めています。

Running Analisis Helth Design sdgs

ヘルスデザイン

健全な⼼⾝を育み、⼈が⽣涯健康に暮らすために必要な要因をランニングとの 関連性を明らかにしつつ抽出し、健康⻑寿社会に向けたモデルを発信します。

・ 血液分析
・ 栄養分析
・ ランニングと健康社会(市⺠ランナーと健康等)
・ ランニングデバイスの研究(ランニングシューズ、ランニングウェア、インソール、 携帯⾳楽プレーヤー等)
・ 感染症対策

SDGs

ランニングという健康にとって基本的な活動を軸に据え、コロナ対策健康SDGまちづくりをテーマに、「すべての⼈に健康と福祉を(目標3)」「住み続けられるまちづくりを(目標11)」など、SDGsの ⽬標達成に向けた具体的なアクションとして「SDG x スポーツ x 災害対策」の地域拠点の在り方を検討します。

・ SDGs 実現を目指すための研究・教育施設の検討

ランニングアナリシス

医学、⽣理学、栄養学、ICTを活⽤した研究等あらゆる学術的側⾯か らランニングについて分析します。

目標設定・実施・自己評価マネジメントプロセス
スポーツにおける目的として、パフォーマンス向上や健康の維持増進など様々ありますが、自身の目的の達成の為には目標設定が重要です。その際、目標の設定は高過ぎても低過ぎてもその目的に対しては効果的ではないと言われています。 本研究では、より効果的に目的達成を果たすために、目標を設定し、その目標に向けた取り組みを実施します。更に、その一連の取り組みを振り返り、自己評価する事で より効果的な目的達成に向けた目標のプロセスを構築していきます。

コンディショニングマネジメントプロセス・手法
パフォーマンスの向上、健康の維持増進などあらゆるスポーツ活動においてその目的を効果的に果たすためはコンディションを最善の状態にすることが重要です。 本研究では、陸上競技長距離走を対象にしてレース時におけるパフォーマンスとコンディションの相関を検証します。そこで、個々にあったコンディショニングを確立することで他の競技 または、健康の維持増進の観点においても応用出来るようなプロセスの構築を目指していきます。


収集した選手主観データとタイムの関係

リアルタイムトラッキング手法
陸上競技長距離走においてリアルタイムで選手の状況を把握することは、より効果的なコーチングをするために重要です。 本研究では、リアルタイムで選手の状況を把握し、その状況をもとにコーチングすることで選手のパフォーマンスがどのように影響を受けるかを検証します。その結果をもとに、リアルタイムトラッキングでのコーチングにより選手のパフォーマンスを向上させることを目指していきます。

メガネ型ウエアラブルセンサーの開発とスポーツ障害予防、パフォーマンス向上に向けた取り組み
近年、ランニング障害を引き起こすランニングフォームが注目され、そのフォームを改善することによってパフォーマンスが向上することが知られています。 本研究では、動作を簡単に解析できるメガネ型のウェアラブルセンサーを企業との共同研究で開発しました。これを用いて、ランニングフォームを簡便に取得し、リアルタイムフィードバックの手法でフォーム改善に役立てることを目指していきます。

3. 研究体制

蟹江 憲史  政策・メディア研究科教授 ラボ代表、統括
保科 光作  政策・メディア研究科特任講師、システムデザイン・マネジメント研究科特任講師 統括補佐、體育會競走部との連携
村井 純   慶應義塾大学教授 大学スポーツ、ITとランニング
植原 啓介  環境情報学部准教授 ランニングとテクノロジー
古谷 知之  総合政策学部教授 ランニングとテクノロジー
近藤 明彦  慶應義塾大学名誉教授 トレーニングと生体に対する負荷状況調査
橋本 健史  スポーツ医学研究センター教授 トレーニングと生体に対する負荷状況調査
神武 直彦  システムデザイン・マネジメント研究科教授 スポーツデータ戦略・活用
真鍋 知宏  スポーツ医学研究センター専任講師 トレーニングと生体に対する負荷状況調査
高木 岳彦  SFC研究所上席所員 トレーニングと生体に対する負荷状況調査
大沼 あゆみ 経済学部教授 環境経済とランニング
岸 博幸   メディアデザイン研究科教授 経済政策とランニング
佐久間 信哉 政策・メディア研究科特任教授 地域資源を活用した健康増進
中島 円   システムデザイン・マネジメント研究科特任教授 空間データ利活用
小野 裕幸  政策・メディア研究科特任助教 體育會競走部との連携
森 将輝   環境情報学部専任講師 心理学とランニング
朽津 広達  SFC研究所所員 プロジェクトマネジメントの研究
細萱 智大  SFC研究所所員 マネージメントシステム研究
小川 涼平  SFC研究所上席所員 研究のアウトリーチ活動
横田 真人  SFC研究所上席所員 まちづくりとランニング
下川 唯布輝 SFC研究所所員 ランニングとテクノロジー

なお、本研究は、SFC研究所xSDG・ラボSFC研究所インテリジェントホーム・コンソーシアムSDM研究所スポーツシステムデザイン・マネジメントラボスポーツ医学研究センターとコラボレーションしながら研究を進めています。 


4. 研究プロジェクト

同じ研究テーマを持つ参加者が、各プロジェクトに分かれて研究活動を進めていきます。
・ ランニングと健康社会にかかる研究(ヘルスデザイン)
・ ランニングデバイスの研究(ヘルスデザイン)
・ SDGsランニングデザイン・ステーション構想:持続可能な社会づくりを「ランニング」を通じて実現するための 研究拠点の在り方の検討 (SDGs)
・ スポーツビジネスが創出する社会的価値にかかる研究(SDGs)
・ 目標設定・実施・自己評価マネジメントプロセス(ランニングアナリシス)
・ コンディショニングマネジメントプロセス・手法(ランニングアナリシス)
・ リアルタイムトラッキング(ランニングアナリシス)
・ メガネ型ウェアラブルセンサーの開発とスポーツ障害予防、パフォーマンス向上に向けた取り組み(ランニングアナリシス)

研究・活動成果

2021年度

原著

1. Hashimoto T., Kokubo T.: Anatomical tenodesis reconstruction using free split peroneal brevis tendon for severe chronic lateral ankle instability. The Keio Journal of Medicine Article ID: 2021-0014-OA Published: 2021 [Advance publication] Released: November 10, 2021 DOI

2. Kohei Nishizawa, Takeshi Hashimoto, Satoshi Hakukawa, Takeo Nagura, Toshiro Otani, Kengo Harato. Effects of foot progression angle on kinematics and kinetics of a cutting movement. Journal of Experimental Orthopaedics. 9(1):11, 2022.

3. 中島 円, 田原 茂行, 鈴木 博文, 永野 智久, 神武 直彦,直接指導と映像指導によるタグラグビーのスキル向上の検討−小学生指導におけるスポーツデータの活用可能性−,スポーツ産業学研究,32巻 1 号 p. 1_19-1_28,2022年

総説

1. 橋本健史:足関節不安定症を有するアスリートにおけるランニングフォームの検討。慶應義塾大学スポーツ医学研究センター紀要 2020:9-14, 2021.

2. 橋本健史:疲労骨折。週間日本医事新報 5088:51-52,2021.

3. 橋本健史:捻挫。週間日本医事新報 5093:44-45,2021.

著書

1. 橋本健史:ウエアラブル端末による動作解析。講座スポーツ整形外科学1・整形外科医のためのスポーツ医学概論(松本秀男編集) 株式会社中山書店 pp131-137、2021.

2. 橋本健史:足関節陳旧性外側靭帯損傷。今日の整形外科治療指針 第8版(土屋弘行、紺野慎一、田中康仁、田中栄、岩崎倫政、松田秀一編集) 医学書院 pp867-867,2021.



2020年度

原著

1.加速度計を内蔵したメガネ型ウェアラブルセンサーとモーションキャプチャーによるデータとの相関性について ランニングフォーム異常の早期発見にむけて(原著論文)木畑 実麻(慶応義塾大学スポーツ医学研究センター), 橋本 健史, 勝川 史憲, 日本臨床スポーツ医学会誌 26巻3号 Page423-430,2018

論文

1.橋本健史:疲労骨折。日本医事新報 5022:42,2020.

2.橋本健史:捻挫。日本医事新報 5022:43,2020.

3.橋本健史:足関節および足部のスポーツ傷害に対する保存治療の実際。
Monthly Book MEDICAL REHABILITATION 254/2020.10:83-89,2020.

学会発表

1.西沢康平、橋本健史、古川美帆、大谷俊郎:慶應箱根駅伝プロジェクトにおけるランニング動作解析結果。
第45回日本足の外科学会学術集会:シンポジウム (2020.11-東京・Web)

2.西沢康平、橋本健史、古川美帆、原藤健吾、名倉武雄、大谷俊郎:ランナーのベストタイムとランニングフォームの関連―眼鏡型ウェアラブルセンサーを用いた検討―。
第31回日本臨床スポーツ医学会学術集会:一般演題 (2020.11-宮崎・Web)

3.西沢康平、橋本健史、古川美帆、原藤健吾、名倉武雄、大谷俊郎:眼鏡型ウェアラブルセンサーを用いたランニングフォーム非対称性の検討。
第12回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会第46回整形外科スポーツ医学会学術集会合同学会:一般演題 (2020.11-神戸・Web)

4.歩行とランニングのバイオメカニクス その時靴は何をしているのか(会議録) 靴の医学 32巻1号 Page26, 2018

5.ランニングシューズに求められる機能と靴医学的課題 長距離ランナーのパフォーマンスに対する新しいランニングシューズの効果(会議録) 太田 友彦(慶応義塾大学 整形外科), 橋本 健史, 宇佐見 則夫, 星野 達, 平石 英一, 須田 康文, 小久保 哲郎, 靴の医学 32巻1号 Page37(2018.08)

講演

1.橋本健史:歩行とは何か―そのシステムと健康への効果・恐竜からヒトまで―アスリートのパフォーマンス向上と一般人の健康寿命延伸のためにできること  
令和2年度中央区まなびのコース連携講座(2020.10.7-中央区)



報告会

2018年度研究活動報告会(2019年4月12日 18:00-20:00、三田キャンパスファカルティクラブ)

2019年度研究活動報告会(2019年10月2日 16:30-18:30、三田キャンパス 東館 6 階 G Lab)

2021年度研究活動報告会(2022年2月7日 17:30-18:10、オンライン)

過去のニュース

2022/2/7
2022年2月7日 (月) ヘルス・ランニングデザイン・ラボ年次報告会をxSDG・ラボ(代表:蟹江憲史)、スポーツシステムデザイン・マネジメントラボ(代表:神武直彦)と連携して開催しました。(オンライン開催)

2020/3/19
11月23日 (土・祝) 15:30 - 15:45 東京ミッドタウン・イーストB1F ホールにて開催されましたランニングデザイン・ラボのPITCH(登壇者:保科光作「慶應箱根へ ~ ランニング研究の先に」)の様子が公開されました。

2019/11/22
SFC Open Research Forum 2019: Beyond SDGs SDGsの次の社会が2019年11月22日(金)-23日(土)に東京ミッドタウンにて開催されました。

2019/10/2
2019年10月2日、ランニングデザイン・ラボ報告会を三田キャンパスG-Labにて開催しました。40名強の皆様にご参加いただきました。

2019/4/12
2019年4月12日に慶應義塾大学三田キャンパスファカルティクラブにて、ランニングデザイン・ラボ第1回報告会を開催しました。

共同研究

ヘルス・ランニングデザイン・ラボでは、以下の皆様のご支援のもと研究活動を行っています。

2. 研究活動への参加について

研究活動へのご参加をご検討の場合は、下記宛にお問い合わせ下さい。
お申込み⼿続きの詳細につきまして、別途ご案内をお送り致します。
また、ご寄付のお申込みにつきましても、ご案内をお送りいたしますので、下記宛にお問い合わせをお願いいたします。

なお、本ラボの活動にご参加いただいた場合、SFC研究所 xSDG・ラボ(代表:蟹江憲史)の一部活動にご案内いたします。

お問い合わせ:慶應義塾大学SFC研究所ヘルス・ランニングデザイン・ラボ事務局
〒252-0882 神奈川県藤沢市遠藤5322
E-mail: running[at]sfc.keio.ac.jp

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